新宗教で安心立命になれるか

 

 小さな書店の前で若者が三人して本の売り出しをやっていました。著者は大川某、急激に会員を伸ばしマスコミを賑わしている新宗教「幸福の科学」の主宰者です。私の家にも著書、機関誌、講演テープが送られてきていて、一応目を通したのですが、なにやら危険な匂いを感じてしまいました。

 

  チャップリンの「モダン・タイムス」 の単純作業を繰り返す労働者を滑稽だといい、そんな人間ではなく指導者になれと説教、そして組織を作り、大きくし、自分しかできない事だけして後は下位の者に任せろと。そして幸福の科学の全容について「現代において傑出した人を創る教えであり、傑出した人を数多く出すことによって世の中を 変えていこうとする考えだと言い切ってよい」と書かれています。

 

  『善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」という親鷺の凡夫悪人を救わんとする弥陀の慈悲とは程遠く、庶民蔑視のエリート中心主義、浅薄な現世利益追及、現代社会に対する無批判ぶりに呆れてしまいました。大川某に、現代の受験体制など社会の歪みを見たような気がします。

 

  如何に傑出した思想家や政治指導者であれ、全世界を理解し、短期間に理想社会などでき得るはずもなく、指導者になろうとか成功しようとか、それこそ心の平安をかき乱す 元。庶民はまあまあ普通に暮らせる生活があればその中で自分なりの生きがいを見いだすもの。やたら人の上に立ちたいと欲求不満の野心家よりは安心立命の境地にたち幸福なのではないでしょうか。

 

 「お元気ですか」24号 199 1年9月