「一日一絵」いつまでも

 

 幹事長会で栃木の宇都宮市の市庁舎を視察 しての帰りに、いつかお会いしたいと思っていた野崎耕二さんのお宅を訪れました。

 

 野崎さんは私と同じ鹿児島の加世田市万世の出身。83年に「進行性・筋ジストロフィ」と診断され、筆を握る右手の握力は10sにも満たず、手も肩より上には上がらない、動くのも車イスという中で闘病絵日記「一日一絵」を画き始め今日に至っています。

 

 この「一日一絵」は日本交通公社から第三集まで、童心社からは「二本の絵筆から」が出版。画材は日常の風景、草花、.野菜、果物、生活小物で、同居のお母さんも誕生日になると描かれているのですが、どの作品、エッセイも野崎さんの生きとし生けるものへのやさしさがあふれています。

 

 車イスでしか移動出来ない野崎さんですが、雨の降らない限り外に出て、いろんな人と出会い、いい関係を作りたいと心掛けているそうです。困るのは段差と放置自転車。そんな 時は出来る限り高校生に声をかけるようにしているとのこと。若い人こそ障害をもっている人を理解して欲しいと語っていました。

 

 自分のありのままを認め、慈しみ、時間を大切に精一杯生きたいという野崎さんには凛とした強さがありました。不治の病がこれ以上進行せず、私達を励ます一日一絵がいつまでも続くことを願わずにはいられません。

 

「お元気ですか」22号 1991年7月