一本の絵筆から

 師走も押し迫った頃、本市に住んでいる遠い親戚のMさんから「一本の絵筆から」(童心社)という野崎耕二さんの画文集をいただきました。

野崎さんは1937年生まれで、私と同じ鹿児島の加世田市万世の出身。現在千葉市に在住。

 未だに原因も治療法も見つからない「進行性筋ジストロフィー」にむしばまれて15年。ほぼ全身に及ぶ病状と闘いながら「一日一絵」を自分に課して7年になっています。

 その絵が「一日一絵」となって日本交通公社から第3集まで発刊され、また戦後のこどものあそびと暮らしを画文で描いた「からいも育ち」も築摩書房から発行されています。

 「一本の絵筆から」は正月が迫りせわしなくワープロに向っている私を、畑や野山を駆け回り画材になっているあけびやあわぐみをおやつ代わりに食べていたふるさとの日々にいざなってくれました。

 いずれの画文集も金とモノに溢れ心のゆとりをなくしがちな現代人に清々しさを取りもどさせてくれるものばかりです。どうかご一読を。

 

1991.1 社会新報(お元気ですか) 中津だより