奄美大島の朝のひととき

  

 視察先、奄美大島・名瀬市は小港湾を中心に開けた街。五時半頃起き出し、軽くジョギング。すでに港は活気が溢れ、採りたてや、さばかれた魚が並べられている。子供に魚の名前を説明している父親の顔が何かしら誇らしげだ。

 漁師同志の話言葉は残念ながら鹿児島出身の私にもなかなか分からない。

 突堤を歩くと三十名程の女の輪ができている。日焼けして、見るからにたくましい海の女達。何処からか島の民謡が流れ、踊りが始まる。幾度かそれが繰り返され、ラジオ体操で解散となる。

 ベンチに寝そべっていた男が六時のサイレンがなるやいなや跳ね起き、俊敏にロープを伝って大きな船に乗り組んでいく。

 ゆったりとした時の流れに包まれたこの街も大島紬の不況と人口集中過密化に悩んでいる。

 市役所玄関前の小学校は一時期千五百人を超える児童で溢れていたらしい。過密化によって失業も増えてきた。土地の値段も名瀬市内と郡部では大きな隔たりがある。どことも失業と土地間題は悩みの種となっている。

 ジェット機の就航をめざして整備が進められている空港を、眼下にしながら島人達の豊かな暮らしを願った。

1987.7 社会新報号外 「つれづれ」より