介護利用状況調査から介護保険を検証する

 介護保険の実施から1年が経過し、マスコミでも検証する記事が目立った。茨木市は昨年の11月に制度の円滑な運営を目的に要介護、要支援の認定者を対象とした利用状況調査を行なった。対象者は3064人、うち回答者2296人、回収率は74.9%である。市は「7割が満足し家族の介護負担も減少」と大きく見出しをつけて、その概要を広報に掲載した。しかし、広報に掲載されたものは一部に過ぎず、利用者の意識をこれだけで判断することはできない。この調査を参考にしながら検証してみたい。

 全国的傾向であるが、茨木市でも介護保険の給付実績は当初予想を大きく下回っている。居宅介護サービス費は予算2017百万円に対し、決算見込は1369百万円で68%、施設介護サービス予算2801百万円に対し、決算見込は2221百万円で79%となっている。

 この理由として要介護認定を受けながら、介護サービスを受けていない人が16.7%いることが挙げられる。サービスを受けない理由の大きなものとして、「家族に介護してもらっている」、「介護の必要はないが、いざという時に利用するため認定を受けた」、「特に介護サービスを受けるほどではないから」が挙げられている。要支援など要介護度の低い人がサービスを受けていない人が多い。また当初ショートスティなど利用が大きく制限されていたために利用できなかった点も挙げられる。

 理由の二点目は利用料の負担が大きいことである。利用料は全体で平均13200円、要介護3で20200円、要介護4で19100円、要介護5で22300円と、要介護3〜5で大きな違いは見られず、要介護4〜5の人が利用を控えているのが浮かび上がってくる。

 利用料の変化は、「増えた」が42.1%、「減った」が5.1%であり、圧倒的に「増えた」が多い。また利用料について「高いと思う」、「やや高いと思う」を合わせると23.9%になり、「安いと思う」の7.2%の3倍強となり、負担感は強い。

負担感が強い保険料

 保険料は利用料より更に負担感が強く、「高いと思う」、「やや高いと思う」を合わせると42.2%になり、「安いと思う」1.3%の30倍強となる。なお「妥当と思う」が18.4%、「分からない」と「無回答」は合わせて38.2%だった。

 この調査は第1号被保険者、約32400人の9%に過ぎない要介護、要支援の認定者だけを対象としたものであり、そもそも申請していない人、申請したが自立と判定された人も含めた調査なら「高いと思う」人の比率は極めて高くなると予想される。

 また「保険料の支払いについて」の項目では、「保険制度であるから納めるのは当然」が51.5%あるものの、「納めるが生活は苦しくなった」が24.2%、「生活が苦しくて納められない」1.4%となっており、生活を圧迫していることが伺える。

予想される保険料の徴収率低下

 今年2月末現在における保険料の徴収は、市が徴収する普通徴収分は90.5%であり、第1号被保険者の半額徴収が、本年10月から全額徴収になれば、払いたくても払えない人が更に増えることは目に見えており、徴収率は低下するに違いない。

サービス事業者の情報提供を

 サービス事業者選定は「自分で選んだ」が60.9%、「ケアマネジャーと相談」、また「ケアマネジャーの勧めで選んだ」が23.9%であった。なお「自分で選んだ」場合の参考資料は事業者の所在地、信用・評判、知名度、他の利用者からの推薦が大半で、事業者の内容を精査するとか、他の事業者と比較してという段階にはない。

 これは事業者を選ぶ際の客観的指標を自治体が持っていないことが最大の要因である。居宅サービス事業者であれば、ヘルパーは常勤か非常勤か、労働条件はどうか、また施設サービス事業者であれば、介護職員1人当たりの入所者数、おむつの交換回数、入浴回数などの情報が利用者に提供されてこそ、政府が言うような事業者間の競争によってサービスが上向くという状況が生まれてくる。議会でも指摘したが、自治体は保険者として利用者に対する事業者の情報提供は欠かせないのではないだろうか。

改善すべき課題が山積

 設問で自由意見を聞いているが、申請手続きについての意見で最も多いのが「誰でも分かるように説明、記述してほしい」、「手続きの簡略化」で、全体の8割を占めている。また保険料は払うが、「加齢」に伴う15疾病でなければ保険の対象とならない40−64才にとって介護保険は保険というより新たな税金でしかなく、少なくとも介護の必要な人は全て対象となるよう早急に改善が求められる。

 ホームヘルパー、ケアマネージャーの労働条件の確保と人員の拡大、特別養護老人ホームなどサービス基盤の整備などまだまだ課題は山積している。

2001夏 「お元気ですか」165号より