IT社会の光と影

 支持率が警戒水域に入った森首相が呪文のように唱える「IT革命」、この四文字が新聞に載らない日はないぐらいである。

 

 昔の話だが、茨木市の教育委員会がパソコンの小、中学校への導入を決めた時に、一体誰が望んだのかと聞いたら、答えは生徒でも保護者でも、もちろん教師でもなく、単に「補助金が付くから」というものだった。業界が将来の消費者と販路の拡大をめざし、文部官僚、与党議員と利権で結びつくお決りの構図である。この延長上にある「IT革命」も結構いかがわしいのではないか。

 

 この十月に六百億もかけて国勢調査が実施された。密封シールを準備したものの、前回の二倍以上の苦情が殺到し、市の担当者は「もうお手上げです」と嘆いていた。昨年の改正住民基本台帳法=総背番号制の経費は初年度が四百億、その後の管理運営に毎年二百億も要するものである。「IT革命」は一部企業の繁栄をもたらし、集中する情報は管理と支配にも大いに役立つことだろう。管理と支配に必要な金には糸目をつけず、市民の暮らしを支える年金,介護,医療は平気で削る政治に腹が立つ。

 

 またアナログからデジタルへの転換は膨大な市場の一方で既存のTVやパソコンの廃棄を伴い、デジタル回線網になれば電気消費量が三倍になるという。「IT革命」を唱える口で環境が抜けている憲法はけしからんというのは矛盾ではないのだろうか。

2000年11月 「新社会大阪」掲載原稿