茨木市議会議員 山下けいきHP

 

茨木市人権尊重のまちづくり条例の制定について、

「門地」を削除し修正を加えることに反対し、

原案に賛成討論

 

1998/12/17

 

○36番(山下慶喜君) 私は、議案第54号、茨木市人権尊重のまちづくり条例の制定について、「門地」を削除し修正を加えることに反対し、原案賛成の立場から討論いたします。


 なぜこのような立場をとるかでありますが。
 その1点目です。ご承知のとおり、憲法は第14条において、法のもとの平等を定め、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」と規定しています。この憲法が、平和主義、民主主義、基本的人権という三大原則を明確にし、世界でも極めて 先進的な憲法であることから、国民から強く支持され、「社会的身分又は門地」と表現のある第14条も、何の違和感もなく、今日定着しているものであります。


 また、2年前に制定された人権擁護施策推進法の第1条の目的にも、「社会的身分、門地」と表現され、政府の提案理由の説明でも、「今日においても、同和問題等、社会的身分や門地による不当な差別」と表現されており、社会的身分、門地を区別して使用していることをつけ加えておきます。


 その2点目でありますが。『広辞苑』やその他の辞典では、門地は「家柄」と書かれており、生まれながらにして身分の差があるものと、一般的にも理解されています。これに対して社会的身分は、家柄をはじめ、出生後に得た政治的、経済的、社会的な身分も含めた広い概念として使われており、また、一般的にもそのように理解されているものであり、社会的身分と門地の意味するところ、ニュアンスの違いは明らかです。

 
 3点目ですが、「門地」を削ることは、被差別部落に生まれたというだけで不当な差別を受けている現実を軽視する危険性をはらんでいる点です。
 部落差別が根強く残っていることは、同僚議員が先日の本会議で取り上げた、調査会社による差別身元調査事件が示した就職差別からも、明らかであります。さらに、本市が93年の7月に調査した人権問題に関する市民意識調査では、結婚の際に、相手が同和地区出身者であるかどうか調べることについて、「必要である」が15.7%、「よくないが必要」が46.5%と、必要と答えた市民が3分の2にも上っており、この比率は、86年の調査から何ら変わっていません。この点からも、家柄を意味する「門地」を削除することには、反対せざるを得ません。


 また一方、人権条例を憲法の上に置くべきではないとの考え方もあるようですが、憲法の枠を超える条例ではなく、憲法の範囲内で、その趣旨に沿って法律・条例が定められるというのは、当然のことであります。
 さらに、行政が市民の意識が高いとか低いとか判断してはならないし、内面に立ち入ってはいけないという議論がありましたが、私は、このように根強く残っている差別意識を放置することの方が大きな問題であり、啓発の必要があると考えています。


 市民や運動体にとどまらず、行政が、この条例をはじめすべての分野で、部落差別をはじめ、あらゆる差別をなくする積極的な取り組みをされることを期待するものであります。


 なお、今日、深刻な不況の中で、倒産、リストラ、首切りが相次ぎ、規制緩和、労働基準法の改悪など、市民生活は困難さを増しています。差別による人権侵害だけにとどまらず、市民が人間らしく生活できるよう、行政としての一層の努力を期待いたしまして、私の討論といたします。

 ご清聴ありがとうございました。(拍手)