茨木市議会議員 山下けいきHP

 

公の施設における指定管理者の設定に関する

条例の制定についての反対討論

2005年9月28日

 

 私は議案に反対の立場から討論いたします。

 今回の議案は本市に指定管理者制度を本格的に導入するためのものであります。

本来、税金を使って建てる公の施設は、直営が原則であり、地方自治法第244条が示しているように、その設置目的を効果的に達成できる場合に限り、委託が可能とされ、本市においても一部が委託されてきました。

 

 ご承知の通り、この指定管理者制度は直接的には地方自治法の改正によるものです。この改正には、「官から民へ」の掛け声のもと、自治体の仕事を民間企業に開放することが、その本質であります。 このために、今、国においては、指定管理者制度の運用について憲法、教育基本法、社会教育法といった法体系を無視し、いわゆる法の下克上といった状況が生まれています。この体系で守られてきた学問の自由などを侵害する動きが現れ、公民館や図書館といった社会教育施設に対しても営利企業が参入することを認める方向が強まりつつあります。

 

 もとより地方自治体が、公正でムダのない効果的・効率的な運営を追及することはもちろんですが、同時に、私は本来の福祉の増進を図ると共に、住民の人権と自由を守るための努力も求められるものであると考えています。

 

 設置目的を効果的に達成できるかどうかを見る場合、住民にとってよりよいサービスの向上が図れるのか、施設の専門性やサービスの質、継続性、安定性が確保できるのか、施設の管理運営が住民に十分に開かれるのか、公の施設の業務にふさわしい職員の身分・賃金・労働条件などが保障されるのか、など十分に検討されなければなりません。

 

 こういった観点から私は本会議で募集要項、指定管理者の業績評価、指定期間、議会や住民のチェック、労働条件の確保、兼業禁止規定、情報公開について質疑をさせていただきました。また昨日配布された委員会の会議録も見せていただきました。

 

 しかしながら、答弁の中でも検討すべきものがまだまだ残されており、全容が明らかになったとはいいがたい状況にあります。現時点において答弁だけで了とするわけにはいきません。

この間の行政当局の一定の努力は認めるものでありますし、またこの制度を逆手にとって住民利益を追求できるのではないかとの期待も分からないことはありません。

 

 しかし、この制度に関して、先ほど述べたように国がこれまでの法体系を無視し、国の行政権限を振りかざして、勝手な解釈を自治体に押しつける動きが顕著になっています。地方分権が当然とされ、国と自治体が対等であるべきにもかかわらず、実際は中央集権が強まる中で、この制度がどのような役割を果たしていくのか、大きな危惧を覚えるものであります。

 

 また指定管理者制度の本質や、導入されるに至った背景には、評価できるような理念は何もなく、あるのは営利企業への市場開放だけ。政府当局には自由競争を是として、競争を煽り、弱肉強食社会を進めていく考えしかないのではと思わずにはいられません。

 

 指定管理者制度によって自治体の民営化を進めていけば、憲法が第8章で規定した地方自治が損なわれ、やがては競争原理によって、そこで働く労働者に解雇や、労働条件の低下を強い、ひいては住民サービスの低下につながりかねない危険性があると指摘せざるをえません。

 以上私の考えを申し上げ反対の討論といたします。ご清聴ありがとうございました。