茨木市議会議員 山下けいきHP

市営住宅管理条例の改正への反対討論

1997/12/16

36番(山下慶喜君) 私は、市営住宅管理条例の改正に反対する立場から、討論を行います。

 本会議の質疑でも明らかなように、今回の条例改正は、公営住宅法の大幅な改悪に沿ったものであります。

 私が反対する第1の理由は、従来自治体にあった家賃の決定権を国が取り上げ、地方自治体は全国一律に従わなければならなくなった点であります。

 家賃は基準値に立地、規模、利便性の係数を乗じて決められ、自治体が関与できるのは、わずかに利便性係数を0.7から1.0の範囲内で定めるだけに過ぎません。これは、地方分権、地方自治の流れに大きく逆行するものであり、政府の地方分権のまやかしぶりを如実にあらわしています。

 理由の第2は、家賃が政府によって毎年見直され、その見直しとは、家賃の引き下げではなく引き上げであることは、火を見るよりも明らかな点です。

 現在、本市の最高家賃は1万2,400円、これが経過措置の後、年収の高い人は7万3,700円にまで引き上げられます。しかも、これまであった上限は取り払われ、経過措置が終わった時点でも値上げは終わりにならず、高い民間家賃に近づくまで続くことになります。

 理由の第3は、政府は公営住宅の建設に努力する姿勢を持たないばかりか、1種、2種の区別をなくし、2種住宅の建設の際3分の2あった補助率を、一律2分の1に引き下げた点です。

 理由の第4は、年収約510万円を超えれば収入超過者と認定され、民間における近傍同種家賃を参考にして算出した額を払わされ、さらに、790万円を超えれば高額所得者とされ、入居資格を失い、住宅を明け渡さなければならないことです。また、明け渡さない限り、最高家賃の2倍を支払わなければなりません。これでは、良質で安い住宅を提供することを目的とした公営住宅法の意味がありません。さらには、これまでなかった世帯全体の収入申告が義務づけられたこと、また、部屋の条件が一緒であれば、隣同士同じ家賃だったものが、応能応益家賃の導入によって、異なる家賃となり、居住者の間に、収入と家賃をめぐって疑心暗鬼をもたらすおそれなど、居住者に精神的な負担をもたらす内容ともなっています。

 以上の理由以外に、改正は、差別をなくすために建設されてきた同和住宅の位置づけをなくして、一般公営住宅に改称してしまうというねらいも持っています。

 部落差別は身分差別であるとともに、『地名総鑑』に見られるように、特定地域に対する差別でもあります。本市の調査でも、身元調査が今もって横行していることは明らかであります。昨年、ある興信所が、依頼もされていないのに身元調査を行い、大阪府が立入調査をした事例や、また、昨年10月に、本市役所のトイレに悪質な差別落書きがなされていたことは、部落差別の根深さを物語るものであります。高額所得者だからといって、差別から逃れることはありません。

 差別解消は国の責務とした同対審答申、本市における同和住宅の建設の先駆けとなったいわゆるナベカマ闘争は、この地域を中心とした団結の盛り上がりを抜きにして語ることはできません。高額所得者になったからといって、差別をなくすために取り組んできた住民を同和住宅から追い出すことは、こうした地区住民の闘いの経過を無視するものであります。また、そのかわりに、低所得者だからといって、差別に対する認識のいかんにかかわらず入居させることは、今後の差別をなくす運動にも問題を残すのではないかと懸念するものであります。

 また、同和住宅の家賃は、民間賃貸住宅に比べて安過ぎる、逆差別だとの認識が一部にあります。しかし、問題は、安くて良質な公営住宅の建設をさぼり、本来不動産である土地を、動産であるがごとくに投機の対象になっても、それを放置してきた歴代自民党政府にあります。この無策が、他国に例を見ない高負担の住宅や土地のバブルを招き、そして、現在の金融不安や不況となっているのです。ゆえに、問題にすべきは、同和住宅が安いことではなく、生活の基本である住宅に、収入のかなりの部分での負担を強いている高い家賃やローンであり、それをもたらしている政・官・財の利権構造にあります。同和住宅だけ問題にするのは、木を見て森を見ない議論であり、問題の根本的解決とは無縁のものです。今求められているのは、貧困な住宅政策に対する市民の不満や怒りを、安くて良質な公営住宅の建設を目指す運動に導き、住宅問題に限らず、まさに諸悪の根源と言える政・官・財の利権構造を突き崩す原動力に高めていくことではないでしょうか。

 以上の理由から、私は、本条例の改正案に反対するものであります。議員各位のご賛同をお願いいたしまして、反対の討論といたします。
 ご清聴ありがとうございました。