茨木市議会議員 山下けいきHP

 

中条、三島保育所を廃止する保育所条例改正に反対する討論

2006年3月23日

私は条例の改正に反対の立場から討論します。

その理由の一つは、今回の提案があまりにも当事者である保護者を無視している点です。

今回の民営化については、保護者の多くが1月27日づけの保育所掲示で知ることになりました。しかもその掲示は「公立保育所の民営化につきましては明日、新聞発表される予定ですので、ご理解を賜りますようよろしくお願いいたします」だけで、内容は何一つ知らされないものでした。

この点保護者に対して誠実さを欠いていると指摘せざるを得ません。当然ですが、このやり方で良いと答えた保護者は4%に過ぎず、75%の保護者が悪いと答えています。また現在に至るまで公立保育所保護者会で市の基本方針に対し理解と納得が得られた保育所はどこにもありません。

さらに懇談会の意見書には附帯意見として「一部民営化への時期、内容については今後、十分な時間をかけ、さまざまな視野から関係者(各専門の経験者、現場の保育士、保護者など)の意見を検討し、慎重に進めていただきたい」の意見を始めとしてさまざまな意見が盛り込まれています。

しかし市の検討委員会はたったの3回、そしてこの懇談会意見書が議題にあがったのは最初だけで、しかもその1回目から市の基本方針が議題にあがっていました。このことはまさに懇談会が民営化ありきの結論を導き出すためのものであったことを明確に物語っています。そればかりか、この懇談会意見書のさまざまな議論について、これを丁寧に取り扱わなかったと言われても仕方のないものであります。

民営化についての議論はまだ始まったばかりだと私は考えています。この間、お伺いしてきた保護者の意見は考える時間を与えて欲しいというものです。保護者が現在の保育行政、公立、私立の保育所の実態を把握し、民営化の意味するものは何か、また懇談会の意見書や、市長の決定についても、それを理解するのには相当時間がかかるものであります。私は保護者の結論がどうなるにしろ、その理解を得る丁寧な努力が無いままに結論を押しつけるのは、あってはならないと考えるものであります

もう一つ納得できないのは保育所の機能と役割を無理やり公立、私立に分けている点です。

市の認識は公立保育所では多様化するニーズに対応できないが、私立保育所はそれが出来るというものです。しかし市の提出した資料から見て、ことさらそれを強調しなければならないほどの根拠は見つかりません。

市が例にあげる延長保育でも公立の保育時間、午後7時を過ぎてまで預かっているのは16箇所の内90名定員のほずみと20名のひだまり、同じく30名のなかよしわんぱくに過ぎません。私立保育所の障害児保育はまだ始まったばかり、しかも軽度の子どもに限定されている状況です。民営化を進めるために、懇談会から今日に至るまで意図的に私立保育所には高い評価、公立保育所には不当に低い評価をしている感がぬぐえません。

また、保育内容の継続もいつまで保証されるのかあいまいと言わざるを得ません。民営化される保育所については三者協議会を設けるとのことですが、あくまでも移管時の園児が在園している間は設置するが、それ以降についてはふれておりません。

民営化されれば当然に、市の関与が少なくなっていくのは理の当然であります。議会でのチェックも難しくなります。更に私立保育所における保護者の立場は公立ほど強くはありません。保護者会が全園で設置されているとの答弁でしたが、保護者から聞くところによれば公立保育所における保護者会の機能とは大きく異っています。保護者がいろいろと要望を出す雰囲気はなく、公立よりは保護者の意見が反映できにくくなる事は明らかです。

ただこれまでの議論の経過から、公立であれ、私立であれ茨木の保育所としてのガイドラインの必要性が共通理解になりつつある点は素直に評価したいと思います。しかしまだその理念や骨格についてはこれからの課題です。それが見えない中での移行はいたずらに保護者の不安を煽るものと言わなければなりません。

今議会では公立、私立、幼稚園、在宅で一人当たりの経費が違いすぎる、その間の格差をなくせという主張がありました。一般論として、また感情論としても理解はできます。しかし、言うまでもなく公立、私立、幼稚園は制度が違うわけで、それを抜きにしてただ一人当たりの経費を比べても意味がないと私は思っています。もちろん公立保育所だけよければいいと考えているわけではありません。保育所、幼稚園、在宅を問わず、幼少期の全ての子どもが安心して成長できるための施策、そのための財源確保に市は全力を注ぐべきだと思っています。

最後になりますが公立保育所運営費の一般財源化は保育所運営に関する国の責任を放棄し、それに係る地方自治体の負担をますます増加させていることが明らかになりました。このことは民営化や保育料値上げを促進するなど、「公的保育制度」そのものを財政面から崩すものとなっています。小泉内閣が進める三位一体改革、地方の財源縮小は地方自治体の公的な役割を奪い、市民に大きな負担を強いているといわざるを得ません。これに対する何の批判もなく、それを是として、あたりまえみたいに民営化を進めることに私は強い違和感を覚えるものであります。

以上私の考えを申し上げ、私の反対の討論を終わります。ありがとうございました。