茨木市議会議員 山下けいきHP

 

 

茨木市事務分掌条例の一部改正に反対する立場から討論

2010年3月09日

 私は議案7号 茨木市事務分掌条例の一部改正に反対する立場から討論を行います。

反対するその第一の理由は人権部を廃止することが「21世紀は人権の時代」とする国際世論や国内の流れに逆行するものであるからです。
議案を見てから、「21世紀は人権の時代」で検索してみました。ヒットした数はグーグルで264万件、ヤフーで285万件にも及びました。まさに「21世紀は人権の時代」との認識が、動かしがたい社会認識として浸透していることを示すものであります。

また「21世紀は人権の時代」という言葉はただ「人権が尊重される世紀」というより、むしろ「人権が重視される世紀」であり、「人権を重視しなければもたない世紀」を意味するまでになっています。
さらに人権問題は、社会の進歩、科学技術の進歩とともに、ますます高度で複雑で重大な問題にもなりつつあり、真摯に向き合う課題となっています。

加 えて貧困と格差が年々拡大するなかで、人間らしく生きる権利がますます失われており、行政はもちろん、市民すべてが人権の課題に向き合わなければならない時代に生きていることを痛感するものであります。

第二の理由はこれまで積み上げてきた本市の人権行政の後退につながるからであります。
本市は1969年に同和対策室を設置して以降、1971年に同和対策部を新設、1992年に人権対策部に改称し、人権・女性政策課を新設、また2001年には人権部に改称し、今日に至っています。
 また人権問題が全市民的な課題であり、この解決に向けた取り組みとして1995年には人権擁護都市宣言を行い「基本的人権を擁護するために、たゆまぬ努力を重ね、地球市民として国際的な視野に立ち、共に学び、考え、行動します」と宣言しています。

さらに3年後の1998年には茨木市人権尊重のまちづくり条例を定め、第1条で人権施策を総合的に推進することを目的として定め、第2条で市の責務として「人権施策を積極的に推進する」とし、第3条に人権文化の創造、第4条に推進体制の充実を謳ったのであります。

そして具体的な推進のために2004年に人権施策推進基本方針を策定し、これから軌道に乗せていく段階にあります。その過程における今回の人権部の廃止はこれまで本市が取り組んできた人権行政の後退につながるものであります。

第三の理由は人権行政を推進する体制の明らかな後退につながるということです。市長は人権行政の推進は従来通りとの見解を示していますが、何の説得力もありません。
現在、部長1、次長2、課長4、課長代理3、係長4の管理職をはじめ、正規職員29人、非常勤職員15人の体制となっており、これは北摂の6市も同様です。

しかし今回の改正は人権部を廃止し、5つの課を1つの課に集約することになります。北摂の6市どこを見ても、一つの課でこれだけの分野を担当するところはなく、人口が本市の半分程度の箕面、池田、摂津においても二つ以上の課をおいて人権行政の推進に当たっています。

今回の改正によって管理職だけではなく、正規職員、非常勤職員も大幅に減らされることは火を見るより明らかです。人が減れば、その分だけ守備範囲が後退することにつながります。
その守備範囲は現在事務分掌施行規則に定められており、人権部の事務項目は人権推進課15項目、いのち・愛・ゆめセンターが9項目、男女共同参画課5項目、合わせて29項目となっています。

これを改正された人権・男女共生課ですべて担当することになれば市長部局で最高の事務項目数をもつ巨大な担当課の誕生となります。一人の課長が5人の課長が果たしてきた役割を担うことなど、できるはずもなく、今回の人権部の廃止、スリム化が人権行政の後退を招くことは必至だと断じるものであります。

第四の理由は本市人権行政の集大成であり、指針というべき基本方針が有名無実化する危険性であります。
 市長は施政方針で「人権施策推進基本方針」等に基づきと述べ、昨日の代表質問に対しても「人権は広い範囲にわたるものであり、市をあげて取り組まなければならない」という趣旨の答弁をされていますが、その一方で人権部の廃止では市長発言の重みを問われるというものではないでしょうか。

基本方針策定から6年が経過しています。しかし方針の中で解決すべき課題として取り上げた同和問題、男女共同参画、障害者問題、高齢者問題、子どもの問題、外国人問題をはじめとする諸問題は解決どころか、遅々として進まず、その糸口すら見いだせない状況にあります。人権部の果たさなければならない役割は低下するどころか、ますます重要になっています。

 この基本方針が議論され、確定した段階において人権部の廃止は俎上にも上っておらず、現在の体制を前提とした方針であり、その大前提を崩すことは基本方針の実行に大きな障害をもたらすと指摘するものであります。

第五の理由は、独立した男女共同参画課がなくなるということであります。
 2000年に施行された男女共同参画社会基本法第九条の地方公共団体の責務に基づき、市は施策推進に努めてきました。またこの法律も含めた男女共同参画社会推進の流れの中で人権女性政策課が男女共同参画課に変わり、男女共生センターローズWAMも2000年に誕生し男女共同参画に向けての取り組みが一段と進んだと私は理解しています。
 しかしながら、本格的な男女共同参画社会はまだまだ遠く、大阪府内の三分の二の自治体で制定された男女共同参画に関する条例も本市では制定の動きすらありません。この点からも現時点で男女共同参画課を無くし、他の4課と全部ひっくるめて一つの課にする状況にはないと言わざるを得ないものであります。

以上、人権部の廃止が本市人権行政の大幅な後退につながる理由を申し上げ、反対討論といたします。議員各位のご賛同を心からお願いします。ご静聴ありがとうございました。