茨木市議会議員 山下けいきHP

 

治安対策の強化の意見書に反対の討論

 

 議員発第16号、犯罪防止のための治安対策の強化を求める意見書に反対の立場から討論を行います。

 

 まず、意見書の認識についてであります。意見書は、犯罪の大幅な増加が目立っているとしておりますが、犯罪が生じる社会的要因がどこにあるのかについては一言も触れておりません。犯罪の原因を社会科学的に分析し、その対応を図らなければ、単なる対症療法をやみくもに行うだけのことであり、真の対策とは言えません。

 

  また、一般的に、犯罪の防止に資する国の施策としては、社会政策は最良の刑事政策であると言われるように、経済政策、福祉政策が犯罪防止に大きな役割を果たしていることは、刑事法学者も認めるところであります。しかしながら、この点についての言及も皆無であります。

 

 意見書は、警察白書や犯罪白書をなぞるがごとくに、来日外国人の犯罪やその拡散化傾向を殊さらに強調し、毅然たる入国管理体制の確立を要求している点についても看過できません。外国人犯罪の増加率が、はるかに日本人犯罪の増加率を上回っておれば、外国人犯罪の増加と言ってもおかしくありませんが、実際の数字はそうではありません。

 

  奈良大学社会学部間淵助教授による「新聞犯罪報道における容疑者の国籍」と題したリポートがあります。これは1998年度の朝日新聞の犯罪報道と警察庁の警察白書、法務省の犯罪白書を分析、考察したものであり、副題は「国籍別犯罪者リストの比較」とされています。これによる犯罪の動向でありますが、時系列的推移、1997年から2001年を見た場合、日本人の犯罪者率を100%とすると、来日外国人の犯罪者率は39%から45%であり、日本人の半分以下となっています。内容的には、粗暴犯が2割、窃盗犯・知能犯・風俗犯が5割であり、高いとされる凶悪犯についても、日本人と同様の比率となっています。新聞報道された比率でありますが、日本人の客観的検挙人員数32万4,263のうち新聞報道された件数は4,826で、1.49%になるのに対し、来日外国人全体の場合、5,382のうち新聞報道された件数は390で、7.25%になっており、報道率は4.87倍にものぼっています。そして、この過剰報道が来日外国人が増加すると犯罪が多発するという認識につながっていると指摘し、客観的データに基づいて冷静に判断することの必要性が強調されています。

 

 また、外国人問題に詳しい山口元一弁護士は、来日外国人が加害者になるよりも被害者になることのほうが圧倒的であり、来日外国人の弱みにつけこみ、日本人には絶対しないような賃金の不払い、カット、劣悪な労働条件が横行していると指摘しています。

 

  警察官の増員が言われていますが、国民には昨今の警察の不祥事に対する根強い不信が存在しています。神奈川県警の本部長をはじめとする組織ぐるみの犯罪、それに続く、新潟県警の不祥事など、いまだ記憶に新しいものがあります。この後も警察官の犯罪や不祥事は後を絶たず、警官が警官を取り締まるケースが今もって続いています。

 

 もちろん、市民生活の平和を守るため職務に精励されている警官が大多数を占めていることは私も承知しております。

 

 しかし、これらの不祥事の温床とされる警察の極端な秘密主義、自浄作用や人権感覚の欠如、公安委員会の形骸化、警備公安警察の偏重、キャリア組とノンキャリア組の昇進における大きな格差などの問題点は、今もって解決の糸口さえ見えず、民主的な改革は遅々として進んでいない状況にあります。このような現況での増員は、問題点に目をつむり、改革にブレーキをかけるものと言わざるを得ず、すんなりと認める心境にはなりません。

 

  また、人口に比して警察官の少ない地域への重点配分も、人・物・金が集中する都市部ほど犯罪が集中するという私の認識からすれば、人口に比例して犯罪が発生しているという見方には疑問を感じるものであります。さらに、警備業者を活用した地域パトロール、防犯効果の大きい地域コミュニケーション形成なども、具体的にどのようなものを考えているか不明な点もあり、一方で、盗聴法、住基ネット、国民総背番号制といった、国民に対する管理と監視が強まる傾向がある中では、戦前の隣組による監視体制につながる危険性も杞憂とは言えないものがあります。

 

 今回の意見書は、犯罪が凶悪化、多様化、国際化する今日の危機的状況と、国民の不安をあおりたて、一方で治安の維持を最大の社会福祉と持ち上げています。しかし、犯罪に対する冷静で詳細な分析や検討を欠いており、ただ力で犯罪を押さえ込む方途だけが強調されており、かえって犯罪の根本的解決を妨げる役割すら果たすのではないかと危惧するものであります。

 

 以上、意見書の幾つかの問題点を指摘し、反対の討論とします。  議員各位の意見書反対に対するご賛同をお願いいたしまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)