第3章 国 民の権利及び義務

 
第10条 国民の要件
 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

第11条 基本的人権の不可侵
 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国
民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、
現在及び将来の国民に与へられる。

第12条 自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によっ
て、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用しては
ならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を
負ふ。

第13条 個人の尊重
 すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求
に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法そ
の他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第14条 法の下の平等
 (1)すべての国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、
社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、
差別されない。
 (2)華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
 (3)栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。
栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限
り、その効力を有する。

第15条 公務員の選定及び罷免の権利、普通選挙と秘密選挙の保障
 (1)公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権
利である。
 (2)すべての公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者で
はない。
 (3)公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
 (4)すべての選挙における投票の秘密は、これを侵してはならな
い。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。


第16条 誓願権
 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、
廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に誓願する権利を有し、何人
とも、かかる誓願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

第17条 国及び公共団体の賠償責任
 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定
めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

第18条 奴隷的拘束及び苦役からの自由
 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場
合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

第19条 思想及び良心の自由
 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

第20条 信教の自由
 (1)信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗
教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
 (2)何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加すること
は強制されない。
 (3)国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教活動もして
はならない。

第21条 集会・結社・表現の自由と通信の秘密
 (1)集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これ
を保障する。
 (2)検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵し
てはならない。

第22条 居住・移転及び職業選択の自由、外国移住及び国籍離脱の自由
 (1)何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選
択の自由を有する。
 (2)何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

第23条 学問の自由
 学問の自由は、これを保障する。

第24条 家族生活における個人の尊厳と両性の平等
 (1)婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利
を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければな
らない。
 (2)配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻
及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両
性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

第25条 生存権、国の社会的使命
 (1)すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利
を有する。
 (2)国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び
公共衛生の向上及び増進に努めなければならない。

第26条 教育に関する権利と義務
 (1)すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応
じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
 (2)すべての国民は、法律の定めるところにより、その保護する
子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償と
する。

第27条 勤労の権利・義務、労働条件、児童酷使の禁止
 (1)すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
 (2)賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法
律でこれを定める。
 (3)児童は、これを酷使してはならない。

第28条 勤労者の団結権
 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、
これを保障する。

第29条 財産権
 (1)財産権は、これを侵してはならない。
 (2)財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれ
を定める。
 (3)私有財産は、正当な保障の下に、これを公共のために用ひる
ことができる。

第30条 納税の義務
 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

第31条 法定の手続の保障
 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由
を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない。

第32条 裁判を受ける権利
 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。

第33条 不当な逮捕をされない権利
 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司
法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなけ
れば、逮捕されない。

第34条 抑留・拘束の禁止
 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護士に依頼する権
利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な
理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本
人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

第35条 住居不可侵
 (1)何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及
び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当
な理由に基いておいて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を
明示する令状がなければ、侵されない。
 (2)捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状
により、これを行ふ。

第36条 拷問と残虐刑の禁止
 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

第37条 刑事被告人の権利
 (1)すべての刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅
速な公開裁判を受ける権利を有する。
 (2)刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に
与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権
利を有する。
 (3)刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依
頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないと
きは、国でこれを附する。

第38条 自白の証拠能力
 (1)何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
 (2)強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若し
くは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
 (3)何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合
には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

第39条 遡及処罰・二重処罰の禁止
 何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為に
ついては、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重
ねて刑事上の責任を問はれない。

第40条 刑事補償
 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律
の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。