公立保育所のあり方に関する懇談会に対する意見

大嶺さやか

 私は公立保育所のあり方を、子育て世代として資料を基に考えたいと思い懇談会の委員に応募した。今まで4回の懇談会に参加したが、私が考えていたものよりお粗末な懇談会で、いろいろと意見を述べさせてもらったがまったく取り上げてもらえない意見書ができあがっている。懇談会の中で議論されていないことも意見書に盛り込まれているようなので、私はこの意見書に賛成できない。また不十分な資料で議論をすすめられ、事務局の保育行政に対する無貴任さを思い知らされる場となった。「懇談会が民営化するかしないかを決める場」であるとするなら、私は公立保育所を民営化する必要性はないと考える。

 

 まず財政の厳しい状況があげられているが、懇談会に出された資料では厳しさは見えてこない。茨木市の経常収支比率は15年度で87.1%と大阪府下でもトップクラスである。それなのに歳出全体の1%(民生費の中では4%にも満たない)支出を今、あり方懇談会まで開いて議論する必要性はなかったのではないか。こんな微々たる金額を子どものために使うことが、茨木市にとって無駄遣いだという根拠はない。

 約20%の児童しか通っていないと懇談会の中ではでていたが、20%しか利用できなくしているのは市の責任である。保育所は卒所した児童のよりどころとなるし、地域の保護者が子育ての悩みを相談できる場となっていることからすると、潜在的な利用者は懇談会の中で考えられているよりもはるかに多い。

その点で平成137月に保育所設置等に関する方針を決定しているが、公立保育所のあり方として「新設及び定員の増員は原則として行なわないものとする」と決めた理由の具体的説明もないまま、懇談会の中で20%の児童が優遇されているような議論は本末転倒である。なぜこのような方針を決めたのか説明を求めたい。

 

 つぎに、公私の差は人件費の差だけで保育の質には差がないと意見書がのべていることについて、人件費の差が保育の質に影響を与えていると実感した立場から意見を言いたい。

私は自分が保育所で育った経験から、どこも同じように保育をしていると思って安心して子どもを保育所に預けた。それが不安に変わるまでに時間はかからなかった。産休明けで預けた子どもは、朝も夕方も柵のついたベッドの中で寝かされていた。ほかの大きな子どもたちはテレビが保育をしていた。元気に外を遊びまわる姿を想像していた私にとってはショックだった。「お母さん何かあったら言ってくださいね」と言ってくれる保育士はいたけれど、子育てを共感できる担任はいなかった。その保育所の児童1人あたりの月額人件費は50910円である(平成15年度〉。その後転所した保育所では、朝夕子どもが所庭を走り回り、自分の子育て経験からアドバイスをくれ、子育ての大変さを分かり合える保育士がいた。ここの児童1人あたりの月額人件費は84370円である(平成15年度)。ちなみに平成15年度児童1人当たりの月額人件費は、公立で126306円、私立で平均68736円である。私立で10年以上勤めている保育士は数えるほどしかいないと聞いている。保育士の経験年数は単に高給取りになるだけでなく、保育の質を向上させるのに貢献している。それは意見書で「保護者が、近年の核家族化や都市化の進展により、地域の育児の孤立化、祖父母から父母への育児知識の継承されることが少なくなってきたこと」と述べているように、保育士が子育てや親育ちに多大な影響を与えているのである。

懇談会の中で「最小のコストで最大の効果」という言葉を耳にしたが、子供への1円の投資は将来10円にも100円にもなってかえってくる。

 

 懇談会全体を通じて、一番影響を受ける子どもたちを置き去りにした議論になっている。「子どもを大切にし、安心して子育て出来る環境づくり」のために私たち大人がしなければならないことは、保育所のあり方が子どもの育ちにどんな影響を及ぼすかということではないだろうか。

 

 最後に懇談会に求めることは、林副会長が前回言っていた、議論を尽くすということである。現在公立と私立がお互い協力し合いながら茨木の保育を担っている中で、さらに向上させるために何が必要か、より幅広い市民二一ズに応えるためにはどうすればいいのか、今ある施策を後退させない前向きな議論をお願いしたい。

 

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