「お元気ですか」179号

 公正な管理組合総会に向けての私見

 先日、今回予定されている管理組合総会に向けて、ご相談がありました。内容は委任状のことです。「一人の方に委任した場合、全ての議案について自分と同じ考えであれば問題はないが、議案によっては異なることが予想される。どうしたらいいか」というものでした。そこで改めて組合員の意見が反映される総会のあり方について、区分所有法、公平な議事運営、委任状など考えてみました。少しでも皆様の参考になれば幸いです。

<1>総会議案書について

  今回の議案書には防犯カメラ設置運用規則()が独立した議案として出されています。これは前回、防犯カメラの設置が予算にはあるものの、独立した議案でなかったことに比べれば大きな前進です。改めて運用規則()が議案になるのに、設置するかどうかの是非を議案にしなかったことの不当性を感じます。

 これからも、新規の事業、一定の予算を必要とするものは慎重な取扱いを確保するために独立した議案として、その可否を問うことを求めたいと思います。

<2>欠席者の議決権を保障するために

「区分所有法」では

 (議事)
第三十九条 集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。とあります。しかし管理組合の総会に全員が出席することは理想ですが、実際はそうはいきません。現に平田台の総会出席者は例年2割前後にとどまり、出席者だけでは何も決定出来ません。

 そのために区分所有法は2項で「議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる。」(以下省略)としています。

 代理人はいわゆる委任状で任せる人を指します。ここで注目したいのは「書面で」という字句です。ここにいう書面とは議決権行使書のことです。議決権行使書は出席できない組合員が事前に議案に対する賛否を明らかにして議決権を行使するためのもので、これを活用する管理組合は増えていくものと思われます。

こ れまで平田台では委任状しかありませんが、議決権行使書を理事会として活用すべきだと考えます。出席、欠席に関わらず組合員は同等の権限と決定権を持っており、これによって組合員は欠席しても議案一つ一つに対して議決に加わることができます。

 法律で保障されている権利ですから、今回の総会議案に対しても、この権利は行使できます。組合員が今回5つある議案に対してそれぞれ賛成、反対と書いて事前に理事会に提出すれば理事会はこれを拒否することはできません。総会当日これを加えて議決することになります。5つの議案のうち賛成、反対に迷う場合は空白でもかまいません。何の記載もない議案は、選挙の際の白票として扱われます。

 ですから手順としては総会に出席できない場合、次のようなルールをつくり、全組合員の共通の理解にする必要があります。なお様式を示していますのでご覧下さい。

(1)出席できない場合は、同封の「議決権行使書」を提出して下さい。

これによってあなたの賛否が総会の議決に反映されます。

(2) 代理人に委任する場合は、「委任状」の用紙に、あなたが委任しようとする方を具体的に記載して下さい。但し代理人が欠席した場合は、当然のことですが、委任者であるあなたも欠席となり、議決権の行使はなかったものとなります。

(3)特定の代理人がいない場合は次の中から選択できます。

  (イ)原案に賛成の場合、理事長に委任します。

  (ロ)総会出席者の賛否の多いほうに賛成する場合、議長に委任します。

(4)いずれも記載が無い白紙の場合は議長に委任したものとして扱います。

 また議案書とともに委任状を配布する際に、「代理人欄の記載についてのお願い」を書くなど白紙委任状を減らすための努力もすべきです。

<3>総会における議決の方法について

@、採決前に出席者数、「議決権行使書」での賛否の数、委任状の内訳(固有名詞のある特定の代理人、理事長、議長、全くの白紙)の数を明らかにする。「議決権行使書」も出席者が確認できるようにして公正さを保つことが必要です。(出席者の賛否は分かるわけで、「議決権行使書」提出者の賛否も同じで構わないと思いますがいかがでしょうか。)

A、総会参加者、「議決権行使書」、委任状(ただし議長委任の分は除く)で採決する。

B、Aにおいて多数を占めた決定に議長委任(含む白紙委任)の数を加えて最終的な議決とする。

 このような方法を取るのは次の理由からです。

<4>議長の立場について

@議長は公平無私の立場で円満な議事運営にあたるべきもので、賛成、反対の立場を最初からとることは出来ません。ですから可否同数の場合を除き採決には加わりません。

Aなぜなら議長が総会において誰になるかは、これまでの慣行で予測しえたとしても、当日決定されるまでは不確定です。このことから組合員が議長に委任している内容は総会成立要件を満たし、決定された事を了解するということであって、最初から個々の議案に対する賛否を委ねているとは思われません。また総会の多数に対する委任と解釈すべきであり、白紙委任の場合はなおさら、その性格が強いと見るべきです。

  ただし委任の要件が整っておれば、議長に最初から賛否も含めて委任しているとの考えも全く否定できません。ですからこの扱いは組合の中でどう判断するのか、全体の共通理解にしておく必要があります。

いずれにしても組合員が自分の意思を正確に反映させるためには@総会への出席、A議決権行使書、B特定の個人への委任の順番になります。

  このような取扱いによって、組合員の意思をできる限り総会に吸い上げていく努力をすれば、日頃も管理組合の活動に関心と責任を持つようにもなっていくことが期待されます。以上の内容はあくまでも私の個人的な考えですが、トラブルや特定の個人の思惑で運営されることを防ぐために一定のルールを定める必要があるように思えます。

2006年5月