茨木市議会議員 山下けいきHP

茨木市議会 安威川ダムに関する山下の質疑

 生越 忠 和光大学教授が責任編集していた「開発と公害」(オリジン出版センター)に掲載されたものです。

 

1982年(昭和57年)3月15日(月)の茨木市議会本会議

における山下慶喜議員(日本社会党)の一般質間 

 

安威川ダムについて

 

質問者"山下慶喜(茨木市議会議員)

答弁者"高木俊治(茨木市企画部長)

 

<山下議員>

 安威川ダムの建設については、ご存知のように大阪府が治水・利水を目的に事業主体となって進められ、新年度予算で調査費が5855万円計上されて、いよいよ動きが活発になってきております。本市でも、府の動きに対応し、市議会に安威川ダム対策特別委員会が設けられ、種々の論議が重ねられてきております。ダム建設にともなう周辺整備計画のための調査費が1550万円計上されているわけでもあります。

 

 また、府と市の関係者で安威川ダム建設対策協議会も設置され、検討が重ねられてきたところであります。

 私は、安威川ダム計画は本市の将来にとって大きな影響をもたらすビッグプロジェクトであり、慎重なうえにも慎重な対応が必要であると考えております。

 また、ダムは、その性格から誤りだった、失敗だったということでやり直すことはできない。そういう性格をもつものです。物事はなんでもそうですが、薬をみてもメリットである効めとデメリットである副作用とがあるように、メリットとデメリットとをもっています。このメリットとデメリットとを十分知り、検討したうえで判断がなされなければなりません。そして、デメリットについては、十分な事前の配慮がなされなければなりません。

 

 大阪府の計画ではありますが、茨木市は地元自治体です。先に述べたメリット・デメリットを十分検討し、地元住民の代弁者としての立場を守り、言うべきことは言う、そういうことが必要です。安威川ダムについてメリット・デメリットを、市としても十分検討されていると思いますが、どのような内容になっているのか、まず最初にお聞きしたい。それから治水・利水・地質等について、細かな点も含めて質問したい。

 

〈治水〉

@ 安威川の集水面積は52.2平方キロメートルですが、1年間の水量、平均でどれくらいか。

 

A 全国各地で起こっている水害・洪水の主な原因は何か。これをよく研究されていると思うわけですが、水害・洪水の主な原因はなにか。

 

B 安威川ダムの寿命。コンクリートの耐久度も含めて、いったいどれくらいもつものだとお考えか。川は水が流れるばかりでなく、土をも運んでいます。ダムは、水を貯めると同時に砂をも貯めるわけです。砂が貯まる率を堆砂率といいますが安威川ダムの基本計画では100年間で5.3%になっている。堆砂が100年問で110万立方メートル。これを総貯水容量2080立方メ−トルで割った数字です。100年間で110万立方メートル。この数字は1年で1.1万立方メートルです。集水面積が52.2平方キロメートルですから、1平方キロメートル当たり210立方メートルになります。このような計算で大丈夫ですか。

 

 じつは建設省は、この堆砂の問題で非常に悩んでいます。というのは、当初の計画を非常に上まわっているダムがほとんどといっていいぐらいあるわけです。日本の TVAといわれた只見川水系のダムは、堆砂でいっぱいです。天竜川にある平岡ダム、これは1952月に完工しましたが、7年後の1959年には51.1%が砂で埋まっています。14年後の1966年には、なんと92.9%が砂で埋まっています。泰阜ダム。これも天竜川にありますが、1936年にできて1967年に83%が砂で埋まっている。31年後には、こういうふうに貯まる。こういうことを考えていかなければなりません。

 

 建設省ダム技術会議に出された資料に『ダムの総合排砂対策について』というのがあります、朝日新聞でも1978年11月5日に大きく取り上げられています。ぜひごらんになって下さい。かの有名な佐久間ダムですが、1958年にできました。20年たった1978年には、7700万立方メートルの土砂が貯まっています。当初の計画では、100年間で6600万立方メートルの予定です。計画の五倍以上のスピードで埋まっているんです.

 

 日本全国の主要なダム256を取り上げて調査したら、年平均堆砂率2%。そのうち80%以上埋まっているものが10%もあったという数字になっています。年平均2%ということは、50年たてばダムは砂でいっぱいということです。このような堆砂のことを考えれば、利水機能や洪水調節機能は、はたして大丈夫なんだろうかと考えるわけです。これではせいぜい20年あるいは30年くらいしか、この二つの作用を十分果たせないと、私は考えます。

 

 安威川ダムの場合ですが、堆砂率が46%、堆砂量が960万立方メートルになれば、その時点で利水についてはダメになります。これは、23年間で利水に使えなくなり、あと残っているのは洪水調節作用しかない。しかも、それは砂が貯まるたびに機能が低下していくということになります。そこでお闇きしたいのですが、

 

C堆砂率の計算は100年間で5.3%。自信をもって大丈夫ということであればその根拠をお示し願いたい。

 

D 堆砂率の計算に周辺の開発あるいは砕石場等を考慮されているのかどうか、お聞きしたい。じつは堆砂が異常に進む原因に、このことがあるわけです。

 

E さらに安威川ダムは、一時間に80ミリという100年確率の大集中豪雨の際を基本としております。このような100年確率の集中豪雨が起こった際、集水面積からどれくらいの堆砂が予想されているのかをお聞きしたい。

 

F この堆砂によって河床の変化がみられます。上流と下流とでそれぞれ変化が起こると思いますが、上流で上がるのか下がるのか、また、下流ではどうなるのかをお聞きしたい。

 

G 市教委が発行している「郷土茨木」これは1975年3月31日ですが、これをみると、安威川よりも茨木川・勝尾寺川のほうが水害を多くもたらしています。ですから、もし、ダムをつくるとすれば、茨木川・勝尾寺川につくるのが自然と考えますが、この点はどうでしょうか。

 

 昨年8月企画部発行の『安威川ダムの建設について』の1ぺージに、「毎年雨期には安威川の計画流量を超える集中豪雨が心配されるなど、この事業は本市にとって重要性緊急性の高いものであります」と書かれています。

 同じ冊子の2ぺージには「大正川合流前基準点で毎秒1000トンの稼動能力がある」とこれまた書かれているわけであります。そこでお聞きしたいのですが、

 

H 大正川合流前基準点で毎秒1000トン、この際の雨量は1時間当たり何ミリ降った場合か。

 

I また「毎年……心配される」と書いてあるが、1976年1月から1980年12月までの5年閻で、一番雨が降った日の雨量、最大日雨量といいますが、いったい何ミリになっているのか。

 

J さらに、大きな被害を出した1967年の時、1時間何ミリの雨が降ったためにあの大水害になったのかをお聞きしたい。

 

〈利水〉

 次に、利水についてでございますが、安威川ダムは当初、治水が目的とされ、計画されたわけであります。しかしながら、1971年4月には水源確保をもその目的とされ、治水・利水を目的とした多目的ダムに変更されました。そこで、利氷についてお聞ざしたいと思います。

 

@ 先程の企画部発行の『安威川ダムの建設について』ですが、治水目的ということについての説明はありますが、都市用水(20万人分)、農業用水(耕地127ヘクタール分)に使うという利水の面については全然ふれておりません。これは、どういうことなんでしょうか。もともと治水が目的であったのに、建設省や大阪府が利水もやれということにしてしまったのか、茨木市としては、利水はどうでもいいが、やはり大阪府・建設省のことも考えて、こういう形になってしまったということなのかどうかをお聞きしたい。

 

 茨木市の市民一入当たり1日の平均給水量は、総合計画では毎年数リットル増えるという予測になっています。ところが、実際は年年減っているという結果になっています。例えば1978年をみると、総合計画では407リットル、実際は379リットル。1979年をみると、総合計画では412リットル、実際は371リットル。手元に資料がそれほどありませんので、1980年、1981年はわかりませんが、総合計画の予測がはずれているというのは專実です。増えるどころか減っています。これは、年間配水量についてもいえることであります。この場合は明らかに人口増加予測の誤りです。1981年には25万1200人、1982年には25万8500人となっていますからそこでお聞きしたいのですが。

 

A 一人当たりの水の使用量は、統計からみれば滅っている。そんなに増えることはないと思われますが、市の考え方はいかがでしょうか。

 

B 大阪府の工業用水は、1972年度から1978年度にかけて増えているのか、減っているのか。

 

C 大阪府の上水道と工業用水との合計ですね。1972年度から1978年度にかけて増えているのか減っているのか。

 

D 20万人分の都市用水。どうしても安威川ダムをつくらないと、にっちもさっちもいかないというせっぱつまった状況にあるとは思えないのですが、市の考えはいかがでしょうか。

 

E 私は、企画部のパンフレットをみてもそう思うのですが、もし水の需要は心配ないということになれば、利水のための850万トンをダムに貯める必要はない、ダムは計画よりも小さめでいいと思うが、この点をどう考えているのか。

 

F 大阪府の『安威川ダムのあらまし』というリーフレツトをみると、都市用水給水地域として茨木市の文字を黄色の円で囲んでいます。安威川ダムのこの都市用水は、茨木市だけで使うのかどうかをお聞きしたい。

 あわせて十日市・戸伏・春日丘の水源地、また、泉原・車作・岩阪などにある簡易水道の自己水源は、現在市全体の25〜30%までを供給しています。将来この自己水源と安威川ダムからの水とで市の水需要をみたしていく考えなのかどうかをお聞きしたい。

 

G もし安威川ダムの水を飲料水として使うとして、そのまま蛇口に送ることにはならない。途中で塩素殺菌等をしてきれいな水にかえるという過程が必要になる。つまり浄水場が必要だと思うのですが、20万人分という膨大な水です。茨木市の既成の浄水場では間に合いません。茨木市に新しく浄水場をつくるのか、他市の浄水場を使うのかをおうかがいしたい。

 

H ダムの水を農業用水として供給すると書いてあります、しかしながら、全国各地のダムの水が農業用水として使われているところからの報告では、ダムからの水の温度が低くなって農作物に対する悪影響が出ている例がいくつかある。水温が変化することについて、どう考えるか。

 さらに、当初は耕地127ヘクタール分の農業用水の確保ということだが、現在はどうなっているか。宅地化が進んで127ヘクタールより減少する。安威川ダムができる頃には、もっと少なくなっているのではないか。

 

 ここに1978年9月末における「全国主要ダムの貯水量および貯水率」という建設省の資料がありますが、淀川水系の室生ダムでは10.3%しか水が貯まっていません。つまり、ダムはあるが水はないという事態です。雨が降らなければ、ダムは水資源確保の役割を果たさないということです。治水と利水との関係にも、矛盾があります。

 

 つまり、洪水を防ぐためには、ダムは空のほうがいいわけですが、利水を考えたら、ダムにはいっぱい水が貯まっていたほうがいいわけです。利水を第一にしたために、ダムが洪水調節作用を果たせず、大水害が起きたという例がいくつもあったということを申し添えておきます。

 

〈地質〉

次に、安威川ダムの地質の件でお聞きします。

@ 大阪府が1976年8月に『安威川ダム総合開発事業計画書』をつくっています。その7ぺージに、ダム軸地質断面図がのっています。このなかにB、CL、CM、CHという記号があります。これは、岩質分類基準を示しているわけです。安威川ダムの場合、総貯水容量が2080万立方メートルになるのですから、かなりの岩石の硬さ・質が必要となります。このB、CL、CM、CHという岩質は、ダムの基礎岩盤としていいのか悪いのかをお聞きしたい。

 

A 岩質が良好であることは当然必要ですが、節理あるいは断層などの不連続面があるかどうかも、地質の点では非常に重要になります。この点はいかがでしょうか。

 

B 大阪府の『安威川ダムのあらまし』をみると、グラウト工法の表示があります。これは、基礎岩盤の強化のためにおこなわれるものですが、これが必要なのかどうかをお聞きしたい。

 

C 安威川ダムの予定地の南方には、有馬‐高槻構造線が走っています。もし、直下型の地震が起こったら大惨事が予想されるわけですが、これについてのお考えをお聞きしたい。間題は、これだけではなく、馬場断層というのも推定されています。これは、ダムサイトと車作とのほぼ中間にあります。このような場所にダムをつくることの危険性について、どう考えているのか。

 

D 湛水、水がいっぱい貯まった場合、地すべりの危険のある個所、昨年末の特別委員会で、北部ダム事務所長が「地すべりが予測される地域については対策が必要」と言っていますが、具体的にはどこをさしているのか。地すべりが予測される地域とは、どこなのか。

 

E 府の事業計画書4ぺージに、崖錐として「沢部・山裾部および山腹の緩傾斜面には、山地風化部より崩落、流出した土砂、岩屑から'なる崖錐堆積物が分布している」とあります。車作の集落がこれに当たると思うわけですが、この点はどうなのか。

 

F 車作の地下水位はどうなっていますか。高いのか、低いのか。このことも滞水に非常に関連しています。

 

〈水質〉

 次に、水質についてお聞きしたい。まずダム湖ダムサイト上流の水質ですが、昨年10月6日付けの新聞を見てみますと、見出しには「ダムの水質汚濁進む、建設省調べ」「臭い飲み水に苦情も」「肥料含む農業用水など流入」とあります。詳しくは言いませんが、調査した48のダムのうち、環境基準を上回る汚濁が進んでいたのが8個所もあるわけです。このままでは、ダム湖が水がめの役割を果たせなくなるとして、ダム湖の水質改善に取り組むという建設省の方針も載っています。

 

 このなかで一番汚染のひどいのが奈艮県の室生ダム。これは、淀川水系です。この室生ダムでは、CODが6.8PPm。なんと環境基準の二倍以上にもなっているわけです。COD、BODだけではありません。プランクトンが増えた、クモが異常に発生した、富栄養化が進んだ、淡水赤潮が発生したと。こういう事例がたくさんあります。プランクトンも、BODが1PPmを超えると、植物性から動物性に質が変わる。そのために湖水の汚染が進む、ということがあるわけです。

 

 私はこれまで、ダム湖の水質がよくなったという事例を聞いておりません。 ダム湖の汚染については、一つは合成洗剤を含む有機物、生活排水が原因と考えられます。さらには農薬・肥料・燐・窒素を含んだ農業用水、上流に砕石場がありますと、そこからの濁り、あるいは川へのゴミ投棄。こういったことも、原因と考えられます。

 

 大阪府の事業として、咋年6月22日から滝畑ダムが貯水を始めております。この貯水開始から10ヵ月も経過しておりませんが、すでに汚染がひどくなっているという報告を聞いております。汚染された水を飲み水にするには、塩素処理等がおこなわれます。汚染がひどくなればなるほど、塩素の使用量も増えます。そして、それが増えると、発がん性物質のトリハロメタンも比例して増えることになります。

 

@ まずおうかがいしたいのですが、茨木市の上水道中のトリハロメタンを調査したことがあると思いますが、その結果を教えてほしい。ダム湖の水を塩素処理すれば、このトリハロメタン、非常に増えるということを私は心配しております。

 

A 次に、安威川ダムの水は飲料水に供するという目的があるわけですから、当然きれいな水でなければならないと考えます。全国のダム湖の水は、先程も言いましたように、ほとんど以前と比べて汚なくなってきています。市は、このことを知っているのかどうか。

 

 さらに、安威川ダムができた場合、その水質はどのようになるのか。良くなるのか、悪くなるのか、それとも、いまと変わらないのか。どう判断なさいますか。その判断と根拠とをお示し願いたい。

 

B 企画部発行の『安威川ダムの建設について』の11ぺージに、「地域整備の諸施策について」のHとして観光漁場、さらにJとして漁業の振興のことが書かれています。ここで、漁業といっているのは、具体的にはどのようなものをさしているのでしょうか。魚とは、いまおこなわれている鮎のことなのかどうか、お答え願います。

 

C 安威川の生態系。上流・中流・下流・魚類・昆虫・微生物、そして植物。調査したことがあるのかないのか。もしあれば、資料として提出して欲しい。

 

D さらに、安威川ダムの建設がこれらの生態系にどのような影響をおよぼすのかをおうかがいしたい。

 

E 茨木市には、特別天然記念物指定の動物がいます。一見するとグロテスクなオオサンショウゥオがそれです。これは、安威川上流の竜仙峡に棲んでおり、1978年5月に庄で、長さ1,1メートルのものが捕えられ、話題を呼んだことがあります。この動物は、渓流でなければ棲みません。ダム湖の上流の水質の変化、はたして大丈夫でしょうか。また、特別天然記念物ですから、当然、生態調査等をやって欲しいが、この発見以来、やっているのかどうかをお聞きしたい。

 

F レクリエーションの場として、「スポーツ広場を基本とした多目的な広場や観光農園、観光漁場、自然公園などの整備をはかること」とあります。これは、あくまでも青く美しい水がダム湖に貯えられて、はじめて可能だと考えます。そのダム湖でプランクトンの異常繁殖による赤潮が発生したら、こんな構想は何にもなりませんよ。はたして、この構想は大丈夫でしょうか。

 

〈ダム公害〉

 ダム建設にともなって、さまざまな環境の変化が起きています。これまで述べてきた堆砂による洪水、河床の変化、湛水による地すべり、水質の汚染、さらにはそれによる富栄養化、プランクトンの異常繁殖、赤潮、臭い飲料水、内水漁業の破壊、生態系の破壊、……。

 

 しかし、問題はこれだけではありません。黒部第四ダムでは、微小地震が起こっています。これは、ダムに大量の水が貯まって、地下の岩盤への水圧が高まることによって岩盤が軽くなる。そういうことが原因で起こるものといわれています。

 

 さらには、インドのコイナダムでは1967年10月10日、マグニチュード6.4の地震が起こっております。アメリカのフーバーダムにも、また、中国、ギリシャ、フランスなどのいろんな国のダムにも、地震が起こっています。いまやダム湖への貯水が地震の誘因になるというのは、学者のなかで定説といえるまでになってきています。イタリアのバイヨントダムでは、1963年10月9日に土砂崩れ、山津波が起きて3000人から4000人の死者が出ております。

 また、1976年6月5日には、アメリカのアイダホ州のキートンダムの大決壊事故が起きたのですが、この事故によって、家屋・家畜・穀物倉庫や樹木がいたるところに浮かぶという、まさに地獄のような災害が引き起こされました。

 このように、ダムにともなう公害といいますか、ダム災害といいますか、市は十分考慮したうえで現在の事業をお進めになっているのかどうかをお聞きしたい。

 

 四国の高知県に、1973年にできた最新型の早明浦ダムがあります。これは、水資源開発公団が「80年に一回の大集中豪雨がきても大丈夫」と胸をはった、洪水調節作用をコンピューターでおこなうというダムです。

 しかしながら、1975年の台風5号で、水害を引き起こしました。1976年の台風17号のときは、「ダム下流には最大流量の毎秒2000トン以上は流さない」という確約を75%も突破して、毎秒3500トンを流したために、やはり大水害を引き起こしたんです。106メートルのダムの頂上から堤長400メートルにわたって毎秒3500トンの水が流下したというのですから、下流住民にとって、それは、恐怖以外の何物でもなかったでしょう。

 

 このダムは、できた当時は「四国のいのち」として期待されましたが、濁り水が貯まっているので、いまや「四国の泥がめ」下流の吉野川は、赤い泥水の帯と化したといわれております。濁っているために、帽子だけ残して川に落ちた小学生が、いまだにみつかっていない。それだけ濁りがひどくなっているんです。このダムも、堆砂のため、40年もたったら砂でいっぱいになるといわれています。このような事例が、全国のダムにはあまりにも多いわけです。どうかダムを考える場合の参考にして欲しいと思います。

 

 また、ダムによる堆砂のため、毎年、国土が200ヘクタールずつ失われているという建設省の報告書がありますが、このような点についてご存知ですか。おうかがいしたい。

 

〈費用〉

最後に、ダム建設の費用についておうかがい致します。

 

@ 1966年度から1981年度まで、大阪府は、調査費等にいくら費してきておりますか。また、本市では、いくら経費を使っておりますか。

 

A 今後、ダムサイト工事、ダム湖右岸への二車線付け替え道路、左岸への二車線市道、府道・私道・林道の改良あるいは新設工事、観光道路建設工事のほか、代替宅地・代替農地・公園・消防施設の建設等、さまざまな関連事業があるわけですが、今後、茨木市の負担、大阪府の負担、国の水特法による補助金は、それぞれどれくらいになるのかをお聞きしたい。

 

B ダムは完成されて以降は当然、維持経費、たとえば堆砂の除去、水質保全その他いろいろの要素がはいります。その場合の維持経費、どのくらい考えればよろしいのか。以上で、非常に細かいところまで質問したわけですが、はっきりしたご答弁をお願いします。

 

<高木企画部長>

 安威川ダムに関連して非常に大所高所から、また各般にわたりご質問いただいたところですが、現在地元の方に基本的なご理解を得るところまでまだいたっておりませんので、事前の技術的な最小限度の調査についてお願いして、ようやくいろいろご検討いただける状態になってきている状況でございます。

 

 したがいまして、只今ご質問いただきましたような非常に専門的な細かいことに、お答えは十分に、卒直にいってできませんが、ご質問のなかでわれわれ、常々検討したり、また、研究している範囲で答えさせていただいて、ご了承いただきたいと思います。

 

 まず、はじめに安威川ダムのメリット・デメリットの点でございますが、ご質問のなかにありましたように、当市にとってきわめて緊急性の高い事業でございます。下流地域のいわゆる人命と財産とを守るという観点から非常に重要な事業でございまして、そういうことが端的にいいましてメリッ卜であり、また、デメリットということになりますと、直接関係地区の皆さん方には生活の根幹にかかわるような重大な問題で、これらをどういうふうに対処して、基本的に理解と納得とをいただくかというところに問題があると認識しております。今後、これらの推進について、十分気を使ってまいりたい。 

 

〈治水〉

C 堆砂量の問題ですが、いろいろと新聞等に出ています建設省の調査なども見ていますが、若干、ご指摘の数字とは……。われわれ認識しておりますのは堆砂率が5.6%ということで、100年間の見込みをたてまして堆砂量を110万立方メートルとみております。有効貯水容量が1970万立方メートルでございますので、5.6%という考えに立っております。

 

E ダムの設計に関連する安威川水量の問題ですが、ダム地点における計画洪水量は毎秒720立方メートル。このうち640立方メートルと考えている。

 

F そして、あのー、この安威川の上流・下流の変化を検討して……。

 

G 安威川でいま計画しておりますのは生保/大門のところに予定していますが、茨木川・勝尾寺川のほうにつくるべきではないかとのご指摘ですが、これについては市のほうから発行している本市の考え方なり、また、府が計画した安威川整備計画の資料にもうたわれているように、安威川流域でするのが一番効果的であると判断しています。

 

〈利水〉

それと利水関係でございますが、現在計画しているのが1日給水量一人400リットルと判断いたしまして20万人分計画しておりますが、今後この事業の椎進のなかで十分検討して詰めてまいりたいと考えております。

 

G 次に安威川ダム(計画)が、その上水に使う場合、直接ダムから取るのか、また、下流で取るのかということですが、ダム湖から直接取るのは不可能だと思いますが、下流に流して一定の場所で確保していく。それを茨木市域内(の浄水場)でやるのか、他の浄水場が必要と考えておるのかという点で.こざいますが、これは卒直に申しまして大阪府の大きな計画のなかでこざいますので、いま、ここで市域内であるとか市域外であるとかはお答えしかねます。

 

H 次に、農業用水の確保の関係で、数字はご指摘のように127ヘクタールの前提で計画していますが、これは都市化の関係で減っていくんではないかということですが、実態としてはそういう傾向にあるとは存じますが、計画段階での面積は127ヘクタール。一応原則においておりますので、今後これを具体的に進めるなかにはこの数字も十分検討しなければいけないと考えます。農業用水なり、また河川維持関係の水量は、一定量は常に流していますので、専門的に温度が低くなるとご指摘ですが、それらについてもなおよく検討してまいりたいと思っています。

 

〈地質〉

 そして、次に地質関係でございますが、この点については(昭和)50年に一定の調査は部分的にさしておるんですけど、まだ全般的な調査は済んでいないところです。先程も申し上げましたように、技術的な最小限度の調査ボーリングとか横坑の調査をお願いして、まだ了解をいただいていない段階です。これらについて専門的にダムに適するかどうかという判断を本市としてすることは遠慮さしていただきたい。

 

C 次に、いわゆる有馬-高槻構造線と馬場断層の関係ですが、われわれもこの問題については、いろいろと府とも協議し、検討、研究していますが、端的に申しまして、有馬-高槻構造線は、私の認識の範囲では、(国道)171号線から約1キロメートル程度北へ寄ったところ、そして、馬場断層は、市域内の馬場から車作のほうへ抜けているところでございまして、これも卒直に申しまして、航空写真で専門家が見た範囲でございまして、特別これを調査してこの位置と決定したものではありませんが、専門家がそういうところを走っておるという文献もございます。

 

 したがいまして、この両断層はダムには直接影響はないと判断いたしておりますし、先般の(安威川ダム対策)特別委員会でもそういう議論がございましたが、府の担当の所長が「断層がありましても、十分ダムの建設には支障がない」とお答え申し上げております。まあ、いずれにいたしましても慎重な対応が必要だと思っております。

 

D そして、ダムに水が貯まってまいりまして、これは将来の問題ですが、地すべり等が起こってくる心配があるんじゃないかという点ですが、これにつきましても、今後ダムサイトの高さ等も調査の結果決まってまいりまして、その対応が必要な場合は、これは起業者である大阪府と十分連絡を取りまして、地域の将来の発展に支障をきたすようなことがないように十分注意してまいりたいと思っております。

 

F 地下水の高低の問題ですが、これは私ども、いまのところ調査資料は持っておりません。

 

<水質>

 次に、水質関係でございますが、いろいろとこれらの間題については今後調査なり、また計画なり進めていくなかで、対応が必要な内容でございますが、いま具体的に安威川ダムが完成した段階で、ご質問にございましたような状況が起こるとか、大丈夫であるとか、市の判断を求められておるんですが、今後の課題として十分研究さしていただこうと思っております。

 

B 「本市の考え方」の「漁業」という言葉は、現在安威川の上流で漁業権を持っておられる内容をさして申し上げています。

 

CD次に、いわゆる環境の変化等によります生態系の変化等の間題でこざいますが、これらにつきましては事前の調査を十分いたしまして、そのなかで、動植物の問題もご指摘もございましたが、これらにつきましても事前にきちっと調査をいたしまして、変化の対応に十分配慮してまいりたいと考えております。したがって、現時点でお示しするような資料は持っておりません。

 

F 次に、ダム湖周辺のスポーツ広場の関係でございますが、これは確定的なことではこざいませんで、地元に(説明に)入りまして、ダム湖周辺の整備計画をどういうふうに考えておるかというなかで、一つの試案として、起業者である大阪府のダム事務所のほうが計画して出したもので、ダム湖周辺も、また、地区別のいろいろと整備の必要がございます。こういう計画につきましては、今後、地元のご意向を十分聞きながら整備計画を立てていく内容でございまして、スポーツ広場が確定したというようなことでは決してございませんので、ひとつこ理解をいただきたい。

 

〈ダム公害〉

 次に、ダムをつくることによって地震を誘導、誘発するという学説もあるということでございます。これは私自身も読んだことがございますが、ダムが建設されて、そういう、ダム建設に関連して公害とか災害とか、こういうことが起こり、地元はもちろんのこと、地域全体に大きな影響が起こることがないように、こういう学説も十分研究さしていただきまして、実際段階におきましては十分煮詰めてまいりたいと考えています。

 

〈費用〉

 そして、ダム事業の事業費の関係でございますが、府・市・国の負担割合というご指摘でございますが、基本的には起業者である大阪府が本事業については取り組んでまいるところでございますが、やはり、これに関連する地域整備という点ではやはりある程度の市の事業費の負担と申しますか、対応は必要であろうかと存じますが、まだ現在、大阪府とそういう具体的な煮詰めもしておりませんので、その点ご了承下さい。

 

 非常に雑ぱくな説明に、あのー、お答えになりましたが、非常に広汎なご質問をいただきまして、また専門的な部分もございまして、十分お答えできていない部分があろうかと思いますが、今後の課題として真剣に取り組んでいきたいと思います。ひとつよろしくご了承をたまわりたいと考えます。

 

<山下議員>

 私、大変期待して質間したわけですけど、本当に大ざっぱなお答えしかいただいていないんです。こういったことについては(安威川ダム対策)特別委員会もありますから、そのなかで詳細に検討すればいいんですが、とりあえずこの場で確認しておきたいことについてだけ質問させていただきます。

 

〈治水〉

A まず洪水・水害の原因ですが、これはなんといっても森林が果たしている役割、水源涵養・保水能力、しかも水をたくさん受けとめて、やがてチョットずつ水を出していくとこのことが一番基本だと思います。全国各地(のダム)で(洪水が)起きた例を見てみますと、どこでも森林が破壊されています。森林というのは、そういった意味でいえば治山・治水の基本であります。ですから一方で開発を進めて一方でダムをつくるということは、矛盾するんではないかと思います。

 

 また、洪水・水害の原因ですが、先程言った宅地化・市街地化、そういったことによって水が地下水になることができない。すぐアスファルト・コンクリートにぶつかるために、一気に河川に流れてしまう。雨が降ってから河川に流れ込むまでが最近非常に速くなっているわけです。そういったことがじつは、洪水・水害のおもな原因だと、私は判断しております。ですから、あくまでも治山・治水を考えるときに、人工的な形でやるんじゃなしに、もう少し森林の保全ということを考えて欲しいと思います。

 

B さらにダムですけれども、これは非常に大変な事業なんです。いったん間違えますと、取り返しがつかないわけです。いったんつくったダムをこわすということは、考えられないんです。そこで、私は、「ダムの寿命はいったいどれくらいか」ということをおたずねしているわけです。ところが、これにはお答えになっていない。専門家に聞いたんですけど、コンクリートだけでも100年しかもたないんです。コンクリートも老化するんです。100年も経ったら、どうしても使いものにならへん。こういうふうになるわけですね。

 

C それから寿命の関係でいえば、先程言った堆砂の計算。全国で数多くのダムを調査したら、やっぱり年2%という数字が出ているんです。どうして安威川ダムの場合だけ、先程5.6%ということがありましたけれど、100年間で5.6%。非常に少ない数字だと思います。どうしてこういう数字がでてきたのかこれについては、特別委員会もありますからお聞きしたいと思いますけれども、具体的なデータをもってきませんとね。

 

 堆砂が進む、しかも、20年、30年位で使いものにならへん。そういうダムは、全国各地にあるわけです。だから先程の質問で財政的なこともお聞きしましたけれども数百億円かける事業でしょ。それだけかけてつくったダムが堆砂のために使いものにならない。利水にも使えない。あるいは洪水調節さえにも……。そういうふうになった場合、どうお考えですか。非常にもったいないと思いますね。端的にいえば、しかもその負担は国民がやるわけです。

 

D 周辺の開発の問題。それから砕石場の問題。大阪府に対して茨木のそういった特殊な事情を説明しているんでしょうか。そういったことも堆砂率の計算に入れるように言っているんでしょうか。この点をお聞きしたいと思います。

 

J さらに1967年の大水害のときに、いったい一時間何ミリの雨が降ったのか。これもお答えいただいておりませんので、再度お聞きしたいと思います。あくまでも洪水に備える場合に、過去のデータは非常に重要になってくると思うんで。データをお示し願いたいと思います。

 

〈利水〉

 いろんな形で水需要(が増える)ということで、多くのダムや事業をやりますけど、そのつけは必ず国民に返ってくるんです。ですから私は、先程水の需要について見直す必要があるんじゃないかと言っているわけです。具体的内容を私は出しましたけれどね。

 

 水というのはそんなに使われていないんです。大阪の上水道、そして工業用水。1972年から1978年。だんだん減ってきているんです。というのは、水道料金の値上げによりまして、企業としても同じ水を何回も使うようになってきている。つまり水のリサイクルをやるようになってきている。そのために水需要が伸びていないんです。

 

 現在、(水道事業)第六次拡張計画が終わり、第七次拡張計画になりますけど、だんだん(多く)水を使うようなことを計画としてはやっておりますけど、果たしてこのような水がいるような形になるかどうか、私は、非常に疑問だと思うんですね。ですから、この点について具体的にお聞きしたいと思います。たとえば、第六次拡張事業、大阪府で計画一日最大給水量は200万トン。1989年には265万トンと、一日の給水量が65万トンも増えてくるわけです。

 

 ご存知のように、滋賀県で琵琶湖総合開発事業がおこなわれております。そして、淀川を通じて大阪府が受け取る水は、莫大な量になってくるんです。そうなってくると、安威川ダムで20万人分の都市用水を確保することが、そんなにせっぱつまった問題なんでしょうか。私は、そんなにせっぱつまった間題じゃない。ただ、いままでの高度成長時代の水需要というのをいまもって踏襲している。そういうふうにしか思われないんです。ですから先程、具体的な例を挙げまして、茨木の総合計画は非常に水増しされているんじゃないかと言いました。この水需要の見直しをやる気があるのかどうかをお聞きしたい。

 

〈市の姿勢〉

 それから全体の計画についてですけれども、たしかに大阪府が事業主体ではありますけれども、この(議会の)場での施政方針、さまざまな市の出すパンフレットは、あくまでも「地元の代弁者」としての立場が根本にあると思うんです。

 しかしながら聞いておりますと、やはり大阪府のやることだという意識が抜け切れていないような感じがするんです。茨木のなかで2080万立方メートルもの水がめをつくる。そして、その湖底には生保の部落が沈んでいきます。生保でつちかわれた文化、そして人間関係、もちろん家屋、農地も沈んでまいります。

 ふるさとを奪われることの痛みを、本当に市の理事者の方が認識しているのか、「温かい心のかよう人間都市茨木」と言っている市長さん、生保の部落、そして周辺の影響を受け入れる人たちの声、本当に心を澄まして聞いて欲しいと思います。

 

〈地質〉

@ 地質の問題を言いました。まだ全般的にやっていないので、具体的なことはわからない、そういう答弁でした。じつは、地質の間題は四ランクに分かれております。A、B、C、D。そして、Cについては三ランクに分かれております。大阪府の出している資料を見てみますと、問題なのは、それぞれの説明はなされておりますが、肝腎かなめの、ダムの基礎岩盤として優良な状況なのか、あるいは適さないのか。このことが書かれていないんです。

 

 ふつう、基礎岩盤の説明のなかには、その岩盤の状態がどうであるかという説明、それの記号が書かれております。それと同時に、ダムの基礎岩盤として適しているのかどうか、これも書かれているわけです。ところが、資料としてそのことが出てこない。

 

B こういうようにやっているとは思いたくないですけれども……。非常にこのことが重要になってくるんです。なぜかといいますと、さっきの質問でも言いましたように、グラウト工法というのを、もし基礎岩盤が悪い場合にはやらなければなりません。グラウト工法というのは、地盤凝固剤というのを使います。セメントミルクに混ぜて使うこともありますけれども、じつはこれは、地下水を非常に汚染してまいります。もちろん表流水も汚染してまいります。

 東京都小金井市で、ある建設工事の際、この地盤凝固剤を使ったために死者も出た。そういうケースもあるわけです。そして、基礎岩盤が悪い場合には、いくらグラウト工法やさまざまな手段を使っても、やはり、岩盤として強化されない。「基礎岩盤が悪ければ、なにをやってもダメだ」と、そういう専門家の声もあるわけです。

 

 ですから、ダムをつくる際は、これがどうであるのかがとくに重要になってくるわけです。そういった点で、地質について言えば(答弁は)まだまだ不十分です。これについては、地元住民は、なんにも知らされていないんじゃないでしょうか。情報公開ということが言われています。

 

 府が持っている資料は、当然、市も持っていなければなりません。そして、市が持っている資料は、当然、地域住民はもちろん、市民全体の前に明らかにして、そして、大きなプロジェクトである以上、全市民の討論がなされるべきだと、私は考えております。市のお考えは、いかがでしょうか。

 

A さらに断層の問題。企画部長も、二つの断層があるということはお認めになっています。地震があるかどうかということは、非常に将来のことですから、これはわかりません。いつなんどき、どういった水害があるかはわからないのと、まったく一緒です。ところが、万が一の水害のためにダムをつくる。ところが一方では、万が一起こるかも知れない地震については、それは心配ないとおっしゃる。おかしいんじゃないでしょうか。

 

D さらに、地質の点でいえば湛水による地すべり。いったいどの地域を指しているのかという私の質問に対しても、お答えがありません。北部ダムの事務所長がはっきりと「地すべりの予測される地域がある。しかも対策をしなければならない」。そういうふうに言っているわけでございますから、いったいどの地域だということは、市として知っておくべきだと思います。もし知っているんでしたら、教えて欲しいと思うんです。

 

 この地すベりの問題でいえば、いままでいろんなダム建設がなされました。そして、本当の(地すべりの)原因は、ダムの建設である。しかしながら、地域住民には、「いや、あの時は集中豪雨がひどかったから、雨がたくさん降ったから起こるべくして起こったんだ。ダムとは関係ありません」。こういうことで、ダムをつくった側が責任を放棄するんです。

 

 前もって危険な(ことがわかっているような)ところ、そういったところにダムをつくるということはいけないと思いますし、当然、そのための対策ですね。わかっていることははっきりと住民に知らせて、危ないところであったら危ない、そういうふうに言わなければならないと思います。

 

EF私が指摘しております車作のところ、ここは昔、地すベりがあったところなんです。調べてもらったらわかりますけれども、崖錐でできております。これは、そのことを表わしております。ですから、いまでも地下水位が高い。湛水が始まりますと、当然地下水位も上昇してまいります。いままでは安全であったところが、水が貯まるために危険になってくるわけです。

 

 私は、将来、この車作の集落での地すベりの危険は非常に大きいと思います。そして、車作が地すべりしたら、その上にある清水の部落、これも危なくなってまいります。どうして地すべりが大変かといいますと、これ、5センチも地すべりしたら、家がもちませんよ。車作の人に、「そこは地すべり地帯である、だから引っ越しなさい」、そういうことを言うんでしたらわかります。しかしながら、車作が地すべり地帯である、あるいは、崖錐でできている、そういったことを説明しておりますか。説明してないと思います。この点についてのお考えをお聞きしたいと思います。

 さらに地下水位の間題ですけれども、「調査していない」というふうにおっしゃられました。車作のところは、冬でも渇水することがないんです。いつでも水が流れるようになっています。私は、地下水位の非常に高いところだと思います。それと、さっき言った崖錐という地域、かつて地すべりがあったといわれる地形。そういった点から、車作にもし地すべりが起こったとするなら、ダムの影響である。そのことは、はっきり指摘できるのではないかという気がします。この点については、本当に真剣に取り組んで欲しいと思います。

 

〈水質〉

 水質の問題では、「今後の対応」というのがお答えでした。、しかし、実際、全国のダムを調べたら、汚濁が起こってないダムというのはないわけです。大阪でできているダムを見て下さい。あるいは、全国各地のダム湖の汚染、よく新聞に載っていると思うんですよ。そういったことが安威川ダムのダム湖で起こらないという保障は、全然ないんです。

 

 しかも、この汚染については、茨木だけではなしに、高槻もあります。能勢にも人がおります。そういったところからの生活排水、当然予想されます。さらには砕石場、さらには農業のなかで使われる農薬、肥料。もともと窒素・燐を含んだ農地からの汚染というのは、ひどいもんになる、私は、そういう気がしているんです。ですから水質汚染、これを防止することを真剣に考えて欲しい。

 

C さらに安威川の生態系、ダム事業が計画されてから10年、もっと経っています。この間にダムができたら、安威川はどうなるんだろうか、心配して当然だろうと思います。その場合に、いま、安威川はどういう状況であるのか。生態系これは即刻でも調査して欲しいと思います。ダムができて安威川が死んだ、そういうふうになって欲しくないんです。全国で、ダムができたために川が死んだという例、いくつもあります。安威川は、市民にとって憩いの場です。あるいは釣をしたり、遊んだり、心のふるさとになっております。そんな安威川が死んだら、どうなりますでしょうか。ぜひとも生態系-動植物については、調査して欲しいと思います。この調査、やる気があるのかどうか、大阪府がやるんではなしに、茨木市がやって欲しいと思います。その点も、考え方をお開きしたいと思います。

 

E さらに、特別天然記念物指定のオオサンショウウオ。あんまり愛嬌のある動物ではありませんけれども、特別天然記念物はどうしても保護していかなければなりません。いま、このオオサンショウウオがどうなっているか、調査してないようですから聞いてもムダかも知れません。しかしながら、このオオサンショウウオを保護していく立場ははっきりして欲しいと思うんです。お考えをお聞きしたいと思います。

 

B それから、観光漁業、この件について言えば、地域の人たちの話を聞きますと、ダムができたら汚染されていく、これはもう常識だ、だから観光漁業なんてやれないだろう。だからもう止めようではないか、という声も聞いているわけです。私は、いくらいろんなことを計画していかなければならないとしても、できそうにもない観光漁業、水質汚染(が起こること)がはっきりとわかるような、そんな全国での例があるのに、あまりにもムシのいいというか、ありえないことを言っているような感じがしてしかたがないんです。できないことなら、最初から言わないほうがいいと思います。

 

〈安威川〉

 さらに安威川全体のことについて言いますけれども、安威川というのは茨木市民の心の糧になっております。教育委員会で茨木の小学校・中学校の校歌の資料をいただきました。手元に40の小・中学校の校歌があります。このなかで、安威川は11出ております。「流れさやかな安威川に、心みがいて健やかに、誠の道をひらきゆく」(安威小学校)、「草木は萌ゆる安威川の、希望の岸のゆかしさよ」(玉島小学校)、「安威のせせらぎ音清く風さわやかな学び舎に」(中津小学校)、「タベにのぞむ安威川の清き流れはとこしえに、世界の平和求めつつ」(芦原小学校)、「とわに流れる安威の川」(庄栄小学校)、小学校・中学校で安威川は、非常に大切なものだと教えているんです。子供たちが安威川をみて、あくまでも水色に、きれいな色に描いて欲しいと思うんです。

 

 四国で、ダムができて、そして生徒たちが赤く川の色を描いたり、あるいは、茶色に描いたり、水の色はいったいどういう色なんだ、そういう声が出ております。あくまでも安威川は、清く美しい川でなければならないと思います。ダムをつくったために安威川が死ぬ、私たち茨木市民の心のふるさとである安威川が死ぬ、耐えられないことだと思うんです。安威川は、茨木市民の貴重な財産です。その安威川が、人工的なダムをつくることによって滅ぼされてはならないと思います。

 

 そういう意味で、安威川上流につくるダム。慎重に慎重を重ねて、先程言ってまいりましたメリット、本当にメリットがあるのかどうか。あるいはデメリット、どういうデメリットがあるのか。本当に、調査して欲しいと思うんです。そして、市民の前に明らかにして、本当に利水・治水、どういった対策が一番いいのか、あるいは規模はどうなんだろうか。ビッグブロジェクトです。調査に調査を重ねても、どこからも不満は出ないと思うんです。いったんつくったダムは、壊すことはできません。いったん失われた自然は、戻ってはきません。そういった意味から、安威川ダム事業についても、慎重な配慮をお願いして2回目の質問を終わりたいと思います。

 

<高木企画部長>

順次お答えを申し上げます。

 

〈治水〉

A 洪水の原因と森林保全の問題ですが、本件については北部丘陵開発との整合も持たしまして、森林保全については十分配慮すべきであると認識しております。

 

B 次に、耐用年数の問題と今回の事業経費とのバランスで、貴重な府民の税金を使うという観点から慎重な計画を立てるようにということですが、ご指摘のとおり、そういうことがあってはならないというふうに認識いたしております。したがいまして、われわれの認識として、やはりコンクリートの耐用年数からいきまして半永久的な施設と認識いたしております。

 

C 堆砂の関係につきましても、十分な配慮をしていく必要があろうかと思います。

 

D また、堆砂の関係で、周辺の状況は十分配慮したかということですが、当然のことでございまして、そういう配慮のうえに計画を進めております。

 

J (昭和)42年の雨量の関係ですが、昭和42年7月9日の集中豪雨ですが、山間部で二五六ミリメートル、時間当たりの最大量が四八ミリメートルです。

 

〈利水〉

 次に、水の利用の増加の問題についてですか、市の総合計画等とのからみで慎重な水需要の見通しをするように、とのご指摘ですが、実際、実施計画段階では当然のことでございます。

 

〈市の姿勢〉

 次に、代弁者としての立場になりきっていないのではないかということですが、本計画か進みましてから十余年経っておるところですが、昨年の8月に安威川ダムの建設についての本市の基本的な考え方を作成しまして、地元の関係の方々に十分、これらの本市のとるべき態度、また今後の考え方をお示し致しまして、一定の評価もいただいております。

 したがいまして、われわれとしては、ここにお示ししております基本的な考え方、また常づね市長が議会でも発言しておりますように、地元の代弁者として、また地域の発展、地元の皆さん方の利益につながるようにという基本方針を堅持致しておりまして、今後もこの考えが変わるわけではございません。よろしくご理解いただきたいと存じます。

 

〈地質〉〈水質〉

@ 次に、地質の関係ですが、先程もお答え申し上げておりますように、今回そういう地質の重要さから、技術的に最小限度の基礎調査をご依頼申し上げておる次第でございます。そういうデータをもちまして一定の判断をする必要があろうと存じます。(昭和)50年には数本さしてはいただいておるんですが、バラバラでございまして、それだけでここで適否の判断をするというのは若干早計ではないかと思いますので、よろしくご理解いただきたい。

 

A 次に、断層の関係ですが、これは「二本あるということを企画部長が認めた」というようなご指摘ですが、私は文献をみて、そういうことがあるということを認識しておるということで、決してそれを実質的に専門家に依頼を致しまして調査をしたわけでもございません。そういう点は、ご理解をいただきたい。それと断層があるがために、いわゆるダムの計画とか、また住宅開発等の議論も本議会でもあるわけですが、それがためにそれらの計画が推進できないというような判断はしてないということを申し上げております。

 

JE次に、地すべりの関係ですが、車作地区のことをご指摘いただいております。以前から車作のほうに入りますと、やはり基盤整備ということが強く要望されております。しかし、ご指摘は、このダムをつくった場合に地すべりが起こるということが予想される地域ということでございます。これは私自身、どこということと認識致しておりません。こういうことについても当然、計画を進めるなかでは地元のご理解がいただけるように十分研究して、対処できるところは対応していきたいと考えております。

 

F 次に地下水でございますが、これはどうあっても調査せよということですが、こういう地すべりの問題、地下水の問題等につきましても、そして次の項で出てまいります生態系の問題、すぐに調査せよというご指摘ですが、地元の皆さん方はまだダム建設については基本的に反対をされておるわけでございます。

 このなかで基本的な、技術的な最小限度の調査をさしていただきたいということをお願いしておるわけですので、あれや、これやということで調査をさしてくれということになりますと、非常に地元の感情を逆なでするような形になりましても、やはりこの事業を進めるなかでは後あと間題があろうと存じます。

 

 したがいまして、いろいろと調査をする事項はたくさんございますが、やはり順次地元のご理解をいただいて調査に入らしていただかなければいけないんじゃないかと、先程ご指摘ございましたように、そういう天然記念物の動植物がある、それらの調査もしとけということですが、当然にこういうあらゆる調査が必要とは思っておりますが、地元と十分話し合いを進めさしていただくなかで、これらの対応はしてまいりたいと考えております。

 

〈水質〉

B そして観光漁業の関係ですが、私どものほうの考え方としては、安威川の上流のほうで考えて一応書かせていただいておる内容でございます。これについても地元の意向に沿うのかどうかということは、今後煮詰めていく問題でございます。

 

〈安威川〉

 最後の安威川についての市民感情、これは冊子にも書いてありますように、本市の市民の皆さんが母なる川ということで非常に大切に、ずっと以前から守ってきていただいた川でございます。そういうことは十分認識したうえで、やはりそういう川ではございますがひとたび、台風とか豪雨がまいりますと、現在で申し上げますと市民の半数、また面積に致しましても相当な面積がはんらんし、いわゆる尊い生命、また財産がなくなるというような面も一面では持っているわけでございます。

 

 そういう観点から、この安威川ダム計画を推進しておりますので、そういう市民感情を十分尊重できるような事業計画をし、安威川ダムについて全市民的な合意が得られるようにという考え方に立っておりますので、その点はよろしくご理解いただきたいと存じます。

 

<山下議員>

 

〈水質〉

C〜E今後、さまざまな調査をやっていかなければならない、そういうことをお認めになっているわけですが、しかし、その生態系の調査ですね。これは、ダムとは関係なしにやれるんじゃないんでしょうか。「母なる川」というふうに言いましたが、その「母なる川」にどのようなものがすんでいるか、オオサンショウウオの生態も含めて、これについてはやれると思うんです。そのことについて、反対する市民あるいは地元の人はいないと思うんです。生態系の調査についてはやるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

 

〈地質〉

 それから断層の問題、地すべりの問題、私、非常に自然を甘くみているような感じがするんです。地質の問題もそうなんでしょうけれども、人工的になんらかの処置を講じたならば、すべて完壁だというような科学万能主義的な考え方がありはしないでしょうか。そのような人間の小手先の技術なんか、自然の前にはひとたまりもない。もろくも崩れ去るというような事態があります。ですから、あくまでも今後の調査ということですが、どのような地質、そして基礎岩盤も含めて、周囲の状況も含めて慎重に基礎調査をおこない、そのうえでの判断をお願いしたいと思います。

 

〈治水〉

「水害になったら多くの人が被害をこうむる」。私も、それを心配しております。しかしながら、その洪水を防ぐための方策として安威川ダムをデメリットも含めて考えるべきだと思うんです。治水はダム、そういう常識だけに凝り固まるのではなしに、先程言った森林の機能を十分認識したうえで植林の事業、そして、むやみやたらに宅地開発も含めて開発がなされないように配慮することが必要だろうと思います。

 

 さらに、洪水の点で言えば、これは静岡県の笹間川ダム。このダムができて数年して洪水が起こり始めたということがあります。さらには天竜川の泰阜ダムの上流8キロメートルの地点で、河床が20メートル上昇している。このことを1960年の5月7日、衆議院の建設委員会で地域の人が証言していますが、先程も言いました堆砂の問題、確率的に言えば、私、非常に低い数値を出している(と思います)。堆砂率の計算に間違いはないだろうか、というふうに言いました。これは周辺の状況も考えて、そのことも言っているとご答弁なさったけれども、本当にあの数値で大丈夫なのか、十分な配慮をお願いしたいと思います。

 

 そして、堆砂というのは湖を徐々に埋めていく。そのために上流の河床が上昇するんです。先程も言いましたように、20メートルも上昇しているところもあります。そのために洪水になる。集中豪雨が起きて、そして周辺に山崩れが起こって、多くの土砂が流れ込み、ダムサイト上流で多くの人が水害に見舞われた。そういうこともあるわけです。ですから、洪水は下流だけで起こるものではありません。

 

 堆砂の問題から考えれば、上流に、バックウォーターとも言いますけれども、堆砂による洪水の危険もあるわけです。ですから、堆砂の計算は慎重にやって欲しいと思います。ご答弁は要りません。基本的な数値については、特別委員会のなかでお願いしようと思います。非常に詳細な質問で答えにくかった点もたくさんあったと思いますけれども、その点はおわびして質問を終わらしていただきます。

 

<高木企画部長>

 第一点目の生態系の調査の件ですが、先程もお答え申し上げておりますように、いま、地元の方とのお話し合いをさしていただいている非常に重要な時期で.ございまして、ダム建設についてはまだ基本的なご理解は、もちろん、まだいただいてないわけでございますが、そのなかで技術的な最小限度に限って、ダム建設とはまだつながらないという条件のもとに、調査についてはなんとかご理解をいただきたいというような形で地元に入らしていただいています。

 

 そういう非常に微妙な段階のなかで、自然・植物等の調査はダムとは関係ないと申し上げましても、やはり地元の感情とすれば、必ずしもそれをご理解いただけるかどうか。私自身、自信がございませんので、先程申しましたような形で、一定の時期には調査をさしていただくというような考えですので、その点はどうかよろしくご理解を頂戴したいと思います。

 

 そのほかの地すべり、断層の問題、洪水等の問題、堆砂率の問題等については慎重な対応を、というようなご指摘ですので、これはそのとおり慎重に対処をさしていただきたいと思います。

よろしくお願い致します。

 

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